Q&A抜粋 出会い系サイト被害 未公開株、社債,証券、保険被害 などUP予定
(消費者事件について)
Q:悪質商法から消費者を保護する特定商取引法と割賦販売法が改正されたと聞きましたが、改正のポイントを教えてください。 |
A:改正のポイントは次のとおりです。
@、特定商取引法改正前、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売にについては、それぞれ政令で定める指定商品、指定役務、指定権利だけを規制対象としていました。
しかし、平成20年改正により、これまでの指定商品・指定役務制を廃止して、訪問販売等では原則すべての商品・役務が規制対象となりました。
また、あわせて、割賦販売法においても、クレジット規制の対象を不動産の販売を除く全ての商品・役務に拡大されました。
A、割賦販売法における「割賦」の定義が見直され、これまでの「2カ月以上かつ3回払い以上」の分割払いのクレジット契約を見直して、「2カ月以上後の1回払い、2回払い」も規制対象とされました。
B、訪問販売業者は、「契約しない旨の意思」を示した消費者に対しては、契約の勧誘をしてはならないこととされました。
C、訪問販売で、通常必要とされる量を著しく超える商品等を購入契約をした場合、契約後1年間は契約を解除できることとされました(ただし、消費者にその契約を結ぶ特別の事情があった場合は例外となります)。
D、個別クレジットを行う事業者は、登録制とされ、立入検査、改善命令など、行政による監督規定が導入されました。また、個別クレジット業者に、訪問販売等を行う加盟店の勧誘行為について調査することを義務づけ、不適正な勧誘があれば契約を締結してはならないこととされました。
E、クレジット契約をクーリング・オフすれば販売契約も同時にクーリング・オフされるようになりました。
F、訪問販売業者等が虚偽説明等による勧誘や過量販売を行った場合、個別クレジット契約を解約して、すでに支払ったお金の返還を請求することも可能となりました。
G、インターネット取引などで、返品の可否・条件を広告に表示していない場合は、8日間、送料を消費者負担で返品(契約の解除)が可能となりました。
H、消費者があらかじめ承諾・請求しない限り、電子メール広告の送信を原則的に禁止とされました。電子メール広告に関する業務を一括して受託する事業者についても、規制の対象とされました。
I、クーリング・オフがあった場合、仮に商品を使用していた場合でも、事業者はその対価を原則として請求できないことになりました。
Q:友達に誘われて、貴金属の展示会に行ったところ、ダイヤモンドの購入を強く勧められました。私は、断って帰ろうとしたのですが、数人の販売員に囲まれて引き留められてしまい、結局、契約するまで帰してもらえませんでした。この契約を取り消すことはできますか。
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A:事業者が契約締結の勧誘をしている場所から、消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から消費者を退去させないことにより、消費者が困惑して契約を締結したときには、その契約を取り消すことができます(消費者契約法4条3項2号)。また、クーリングオフができる場合もあります(特定商取引法9条1項)。
消費者契約法4条には、契約を取り消すことができる場合として、誤認類型と困惑類型の2つを規定しています。誤認類型は、@不実告知による勧誘、A断定的判断提供による勧誘、B不利益事実の不告知による勧誘のいずれかがあったことにより、誤認して契約締結をした場合には取り消すことができるというものです。困惑類型は、@消費者が事業者に対し、住居または業務を行っている場所から退去すべき旨の意思表示を示したにもかかわらず退去しないこと、または、A消費者が事業者に対し、勧誘を受けている場所から退去する旨の意思表示を示したにもかかわらず、退去を妨げられたことにより、困惑して契約締結した場合に取り消すことができるというものです。
また、消費者契約法は、契約書で消費者にとって不当な条項があり消費者の正当な権利が制限される場合には、そのような契約条項は無効ないし一部無効とする規定もあります。たとえば、事業者の責任を全て免除する条項や消費者に高額な違約金を定める規定、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項を無効とする規定があります。
詳細はご相談下さい。
A:クーリングオフとは、一定の取引について、所定の期間内であれば、何らの理由も必要とせず、かつ、無条件に申込を撤回し、または、契約を解除することができるという制度です。
たとえば、リフォーム会社の従業員の訪問を受けて、その従業員が屋根が腐っており雨漏りの危険があるなどとして屋根の改修工事を勧めてきて屋根改修工事契約をしてしまったとします。この場合、いわゆる訪問販売であり、かつ、家屋の修繕または改良はクーリングオフの対象となっていますので、リフォーム会社から法律で定める書面を受け取ってから8日を経過していなければ、クーリングオフをするとの通知書(内容証明郵便が望ましい)を発送すれば契約はなかったことになります。この場合、業者は、損害賠償や違約金を一切消費者に請求することはできません。
なお、行使期間内であれば、工事が終わった後でもクーリングオフはできますし、行使期間を過ぎていてもクーリングオフができる事例もあります。
詳細はご相談下さい。
Q:どのような場合にクーリングオフができるのでしょうか。
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A:クーリングオフについては、特定商取引に関する法律や割賦販売法など様々な法律に規定があります。 特定商取引法の場合、次の5つの類型に該当することが必要です。
@、訪問販売(キャッチセールス、アポイントメントセールスを含みます)
(指定商品ないしサービスに該当することが必要です)
(行使期間法定書面受領日から8日間)
A、電話勧誘販売
・(業者が勧誘目的を告げないで郵便などで消費者に電話をかけさせた場合を含みます)
・(指定商品ないしサービスに該当することが必要です)
・(行使期間法定書面受領日から8日間)
B、連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法です)
・(全ての商品・権利・サービスが対象となります)
・(行使期間法定書面受領日から20日間)
C、特定継続的役務提供
・(エステティックサロン、外国語会話教室、家庭教師等、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスの6つについて、一定期間を超えるサービスの提供とこれに対する一定額以上の対価を支払う契約のことです)
・(行使期間法定書面受領日から8日間)
D、業務誘引販売取引(仕事を提供して収入が得られるとして勧誘し、その仕事をするために必要 だとして商品等を販売する取引のことです)
・(行使期間法定書面受領日から20日間)
(注)通信販売の場合
特定商取引法上、通信販売には、クーリングオフに関する規定はありません。平成20年改正において、通信販売においては、消費者からの「商品」または「指定権利」の売買契約の申込の撤回を原則可能とするものの、事業者が通信販売の広告で返品特約に関する記載を経済産業省令で定めたルールにより行った場合は、申込の撤回はできないこととされています。なお、契約の申込の撤回や解除は、購入者が商品等を受け取った日から8日までとされ、返品のための送料は購入者負担となります。
上記のような特定商取引法以外にも、E割賦販売(2ヶ月以上の期間にわたりかつ3回以上に分けて支払う条件のもの、行使期間8日間)、F営業所以外の場所での保険期間1年を超える生命保険・損害保険契約(行使期間8日間)、G50万円以上のゴルフ会員権契約(行使期間8日間)、H業者が売り主で事務所等以外での宅地建物の売買(行使期間8日間)、I投資顧問契約(行使期間10日間)、J商品ファンド契約(行使期間10日間)、K海外商品市場における先物取引の受託(行使期間14日間)等について、クーリングオフ制度があります。
Q:訪問販売でクーリングオフができない場合、契約の取消はできないのでしょうか。
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A:民法や消費者契約法で取消が認められる場合があるほか、特定商取引法でも取消できる場合があります。特定商取引法では、勧誘の際に次に記載する事項について不実告知または故意による事実の不告知があり、それにより誤認して契約してしまった場合に取消できると規定しています。
@商品の種類、性能、品質、効能、商標または製造者名、販売数量、必要数量
A権利もしくは役務の種類、役務または権利にかかる役務の効果
B商品もしくは権利の販売価格、役務の対価
C商品もしくは権利の代金または役務の対価の支払いの時期及び方法
D商品の引渡時期もしくは権利の移転時期または役務の提供時期
E売買契約もしくは役務提供契約の申込みの撤回または解除に関する事項
F顧客が売買契約または役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項(ただし、不実告知の場合のみ)
Gその他、売買契約または役務提供契約に関する事項であって、顧客または購入者もしくは役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの(ただし、不実告知の場合のみ)
なお、電話勧誘販売(法24条の2)、連鎖販売取引(法40条の3)、特定継続的役務提供(法49条の2)、業務提供誘引販売取引(法58条の2)の場合も同様の規定があります。
Q:訪問販売での契約を解除したのですが、業者から多額の違約金の請求を受けています。契約書には確かに記載されていますが業者の言うとおりの金額を支払わなければならないのでしょうか。
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A:契約を解除した場合の違約金ないし損害賠償額が契約書に記載されていても、業者は次の金額を超えては請求できないと解されます(法10条参照)。
@商品等が返還された場合
その商品の通常の使用料の額、または商品の販売価格から返還時の評価額を控除した額のいずれか高い額。
A商品等が返還されない場合
その商品の販売価格に相当する額(分割払いの場合は支払総額)
B役務提供開始後に解除された場合
提供された役務の対価に相当する額
C商品引渡前、役務提供開始前に解除された場合
契約締結のために通常要する費用の額(書面作成費、印紙税等)
なお、電話勧誘販売(法25条)、連鎖販売取引(法40条の2)、特定継続的役務提供(法49条)、業務提供誘引販売取引(法58条の3)の場合も同様の規定があります。
Q:いわゆるマルチ商法で商品を大量に購入してしまい解約を申し出たのですが、クーリングオフ期間を過ぎているので解約は認められないと言われました。本当に解約はできないのでしょうか(連鎖販売取引)。
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A:クーリングオフ期間がすぎていても、業者から受け取った書類の記載不備などがあれば、なおクーリングオフができる場合があります。
さらに、連鎖販売契約締結から1年を経過していない無店舗個人は、商品の引渡を受けた日から90日以内の未使用の商品については、連鎖販売契約を解除(退会)するとともに、解約返品することができます(中途解約権)。この場合違約金は10%以内とされています。
また、事情によって、民法や消費者契約法に基づく取消権の適用なども考えられます。
しかし、消費者契約法は原則として事業者間取引では適用されないという問題もあります。
そこで、2004年法改正により、特定商取引法でも取消権(法40条の3)が認められました。
統括者や統括者から委託されて説明会などで勧誘を担当する者などからの勧誘の場合、一定の事項について不実告知または故意の事実不告知があれば取消できます。
一般連鎖販売者からの勧誘の場合でも一定の事項について不実告知があれば取消できます。
ただし、連鎖販売契約の相手方が、不実告知などが行われたことを知らなかったときは取消できません。また、追認可能時から6ヶ月の消滅時効ないし契約締結から5年の除斥期間という行使期間の定めがあります。
不実告知の問題となる一定の事項とは、次のとおりです。
@商品の種類及びその性能もしくは品質または施設を利用しもしくは役務の提供を受ける権利もしくは役務の種類、及びこれらの内容その他これらに類するものとして経済産業省令で定める事項。
たとえば、効果が科学的に認められていないのに効果があると告げるなど。
A当該連鎖販売取引に伴う特定負担(その商品の購入もしくはその役務の対価の支払いまたは 取引料の提供をいう。
たとえば、再販売等をするために、必要とされるスターターキット購入代金や入会金、保証金、登録料、研修参加費用等)に関する事項。
B当該契約の解除に関する事項
Cその連鎖販売業に係る特定利益(その商品の再販売、受託販売もしくは販売の斡旋をする他の者または同種役務の提供もしくはその役務の提供の斡旋をする他の者が提供する取引料その他の経済産業省令で定める要件に該当する利益の全部または一部。たとえば、誰かを勧誘してその人が組織に加入した場合、その人が組織に支払う取引料の5%がもらえるなど)に関する事項。
たとえば代理店になれば就き100万円の収入が確実にはいるなど。
Dその他、その連鎖販売業に関する事項であって、連鎖販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの。
たとえば、連鎖販売取引であるにもかかわらず、連鎖販売取引ではないと言われたなど。
なお、特定継続的役務提供の場合にも、中途解約権、取消権について類似規定があります。
詳細はご相談下さい。
Q:特定商取引法に定められる連鎖販売取引とはどのようなもののことをいうのでしょうか。 |
A:法33条1項では、「連鎖販売業とは、物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。以下同じ。)の販売(そのあっせんを含む。)又は有償で行う役務の提供(そのあっせんを含む。)の事業であって、販売の目的物たる物品の再販売(以下この章において「商品」という。)の再販売(販売の相手方が商品を買い受けて販売することをいう。以下同じ。)受託販売(販売の委託を受けて商品を販売することをいう。以下同じ。)もしくは販売のあっせんをする者又は同種役務の提供(その役務と同一の種類の役務の提供をすることをいう。以下同じ。)もしくはその役務の提供のあっせんをする者を、特定利益(その商品の再販売、受託販売もしくは販売のあっせんをする他の者又は同種役務の提供もしくはその役務の提供の斡旋をする他の者が提供する取引料その他の経済産業省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部をいう。以下この章において同じ。)を収受しうることをもって誘引し、その者と特定負担(その商品の購入もしくはその役務の対価の支払い又は取引料の提供をいう。以下この省において同じ。)を伴うその商品の販売もしくはそのあっせん又は同種役務の提供もしくはその役務の提供のあっせんに係る取引(その取引条件の変更を含む。以下「連鎖販売取引という。)をするものをいう。」と規定されています。
たとえば、@再販売型 A受託販売型、B販売あっせん型、C同種役務の提供型、D同種役務の提供のあっせん型などに整理されることがあります。
詳細はご相談下さい。
(商品先物取引被害・外国為替証拠金取引(FX)について)
Q:商品先物取引業者から絶対儲かるなどとの勧誘を受けて、金などの先物取引をしたのですが、当初の予定を超えて多額のお金をつぎ込んでしまい、大損害を被ってしまいました。先物業者に損害賠償請求などできないのでしょうか |
A:損害賠償を請求できる場合が多くあります。
売買報告書や入出金(振替)通知書、委託証拠金預かり証、残高照合通知書、証拠金等不足額請求書などの資料があればご持参ください。
業者に不当な念書など取られないようにご注意下さい。
商品先物取引で被害を被る典型的なパターンとしては、強引な勧誘があり、先物取引の仕組みや危険性を十分に理解できていないにもかかわらず、先物取引をはじめさせられてしまい、実質的に先物業者の言いなりに取引を繰り返させられてしまい、最初のうちに多少儲かったとしても、いつのまにか過大取引に引き込まれ、無意味な反覆売買を繰り返されて手数料負担が多額になっていき、取引をやめようとしても、仕切回避・仕切拒否をされて結局大きな損害を被ってしまうというものでしょう。
判例でも、勧誘段階から取引終了段階までの行為を一連のものとして把握し、一体として不法行為と認めて、過失相殺される場合もあるものの、先物業者に損害賠償を命じるものが多くあります。
詳細はご相談下さい。
Q:先物業者の勧誘は何も規制されていないのですか。
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A:平成17年5月1日施行の商品取引所法では、業者に勧誘受諾確認義務(法214条第7号)が課せられました。また、再勧誘は禁止(法214条第5号)されています。
勧誘受諾確認義務とは、先物業者は、勧誘に入る前に顧客に対し、自己の商号とともにその勧誘が商品先物取引の勧誘であることを予め告げた上で、顧客に勧誘を受ける意思があるかを問いかけ、それに対して顧客が勧誘を受ける意思があることを確認した上でないと勧誘できないというものです。
Q:外国為替証拠金取引の勧誘を受けています。セールスマンから、少ない資金で効率的に運用でき、手数料も安く、スワップ金利で高収益も期待できるので、安心・安全に高収益をあげることができますなどと言われていますが、危険はないのでしょうか。 |
A:外国為替証拠金取引で多額の損害を受けたとする被害相談が多くなっています。
外国為替証拠金取引も、少ない証拠金で多額の取引を行うので、予想し得ない損害が生じるおそれがあります。また、業者は手数料が収入になるので、頻繁に無益な取引をさせられる危険や、手数料が高くなる国の通貨に乗り換えさせられたりする危険があります。しかも、業者との相対取引(顧客が得をすれば業者が損をする)の関係にあることが多く、顧客の利益を図ってのアドバイスが期待できない構造にもあります。スワップ金利についても為替市場の情勢から逆の取引をすることになれば、スワップ金利がもらえるどころか逆にスワップ金利を支払わなければなりません。判例では、外国為替証拠金取引を賭博であり公序良俗に反する違法な行為としたものもあるほどです。
そもそも、取引の仕組みをよく理解した上で、市場情勢をにらんで自分で判断できなければ、予期せぬ損害を被るものです。少なくとも、ここに書いてあることぐらいがよく分からないにも関わらず取引に入ってはいけないものでしょう。取引を開始してしまったのであればすぐに全て仕切ることをおすすめします。
なお、外国為替証拠金取引の場合、改正金融先物取引法76条4号で、勧誘の要請をしていない一般顧客に対して、訪問又は電話による勧誘をしてはいけないことになっています。
ドロップシッピングについて(ネット消費者被害)
第1 はじめに
1 ドロップシッピングとは
まず,一般に「ドロップシッピング(Drop Shipping)」とは,日本語では「直送」を意味する流通用語であり,インターネット上における商品の広告又は販売の一形態を指す。具体的には,ネットショップ運営者がネットショップを通じて商品等を閲覧者に販売した場合に,販売したネットショップ運営者自身が商品の仕入・発送するのではなく,製造元や卸元が直接発送を行う取引形態をいう。
ネットショップ運営者は,販売価格を自ら設定して販売し,仕入価格との差額分がネットショップ運営者の利益となる。また,ネットショップは注文を受け次第,注文情報を製造元ないしは卸元に転送することで,商品の発送を製造元ないし卸元に代行してもらうことで,在庫を持たずにネットショップを開設することが出来るメリットがある。
2 ドロップシッピングサービス提供業者(以下「業者」という)のシステムについて
業者のシステムは,上記「ドロップシッピング」の取引形態に関し,ネットショップ初心者が敬遠するネットショップ構築作業,集客作業,マーケティング,商材選択,在庫管理,代金精算に至るまでネットショップ運営に関する主要な作業内容全てを業者が行い,顧客は,商品選択,代金設定,注文処理,商品代金の入金確認,仕入代金の送金といったネットショップ運営に関する一部の作業に従事することによって当該ネットショップでの商品販売から得られる利益を簡便に得られるものと謳うものである。
3 業者と被害者との契約内容(代表例)
(1) 業者が提供する役務ないし商品
ア ネットショップ構築
業者は,被害者固有のネットショップ開設に必要な作業(ホームページの制作,※1ドメイン取得,※2サーバ管理,※3コーディング等)を行い,被害者において商品展示・代金設定及び商品購入者(被害者のネットショップから商品を購入する者;以下「顧客」という。)から具体的注文を受け付けられる仕組みを組み込む。
※1 ドメインとは,インターネット上に存在するコンピュータやネットワークを識別するために付けられている名前の一種。インターネット上の住所のようなもので,重複しないように発行・管理されている。アルファベット,数字,一部の記号の組み合わせで構成される。近年では,日本語など各国独自の言語・文字でドメインを登録できる国際化ドメイン名も利用できるようになった。
ネット上のコンピュータ同士はIPアドレスによってお互いを識別し,通信を行なっているが,数字の羅列であるIPアドレスは人間にとっては扱いにくいため,別名としてドメインを運用するようになった。ドメインとIPアドレスを対応させるシステムはDNSと呼ばれ,全世界のDNSサーバが連携して運用されている。一つのドメインに複数のIPアドレスを対応させたり,一つのIPアドレスに複数のドメインを対応させることもできる。
※2 サーバとは一体何か。サーバの役割を考えてみるとよい。もともと「server(=サーバ)」とは「ネットワークで繋がったコンピュータ上で他のコンピュータにファイルやデータ等を提供するコンピュータ,またそのプログラム」を指す。サーバからファイルやデータなどを受け取る側を「client(=クライアント)」という。
サーバはコンピュータとコンピュータの真ん中にあって,色々な「リクエスト」に応えている。メールの確認もデータの受け渡しもウェブページ閲覧も全てクライアントであるコンピュータのリクエストにサーバが応えているのである
※3 プログラミング言語【コンピュータプログラム(コンピュータ へ計算などをさせる命令を組み合わせた文書)を記述するために使われる人工言語】を用いてソース(ソフトとして稼動可能なプログラムを構成している元テキスト)ファイルを作成すること。
イ 集客作業
業者は,ネットショップ開設による集客作業に加え,商品情報のアップや原稿作成を基本として,被害者が選択したコース内容に応じて,メルマガ機能,ブログ設置,ネットショップのSEO対策(ヤフーやグーグル等のサーチエンジンで検索結果の上位に表示されるようにすること。),広告プロモーション・広告掲載,集客サイトへのリンク等を行い,さらなる集客力強化を行う。
ウ 商材選択,在庫管理
業者は,独自のマーケティング調査の上,顧客のニーズに合わせた商品を商材として選択し,会員制サイト上にて2万点以上の取扱商品名と卸価格一覧を被害者の閲覧に供する。
取扱商品については,業者において,販売に必要な数量を確保するか,具体的納期に間に合うように仕入先から調達しうる状況を確保し,その際の仕入価格は,業界最安値のものとする。
エ 商品発送
被害者がネットショップにて展示した商品について顧客より注文を受けた後,業者は,被害者より出される発送依頼に対応し,具体的納期に従い,対象商品を顧客へ直接発送する。
オ 代金精
業者は,被害者が顧客より入金を受けた金員の中から,仕入代金分の入金を受ける。
(2) 被害者が業者に対して負担する義務ないし作業
ア 対価の支払
被害者は,業者からの上記役務の提供を受ける前提として,本件各契約の初期費用(商材代金)を業者に支払う。
イ 商品選択,代金設定
業者が提供を約束する取扱商品(契約後閲覧可能となる会員制サイトに掲載)の中から,具体的商品(ゲーム機や家電製品,食品,チケット等)を選択し,代金を設定する。
ウ 注文処理
ショッピングサイトを通じて顧客から購入注文があった場合,顧客に対し事前に業者より提供されたテンプレートに従い,注文確認と入金先口座等の説明を記載したメールを返信し,また,業者に対して商品発送依頼のメールを送信する。
エ 商品代金の入金確認,仕入代金の送金
被害者は顧客から自己の口座に販売代金の入金を受けたことを確認した後,業者に対して,具体的商品の仕入代金を業者口座に送金する。
4 ドロップシッピング商法の問題点(但し,必ずしも全事例に当てはまるものではないものと思われる。)
(1) 業者の勧誘文句と売り上げの低迷
業者は,被害者に対し,「初心者でも自宅で高額の副収入が得られる。」「リスクなしで稼ぐ。」「収益を安定して稼ぐ。」「月○○万円の収入を確約する。」など,あたかも,業者が構築したネットショップを利用すれば,安定した売上や収益が見込める旨断定的に説明する。
しかし,業者が構築するネットショップには集客力が無く,被害者は,ネットショップ開設当初から,ほとんど注文を受けることがない。
(2) 業者が,集客,広告等をしない
業者の構築したネットショップに何ら集客力が無いのは前述したが,それのみならず,業者は,約束に応じたSEO対策,広告・プロモーションといった付加サービスを殆ど(全く)しない。
(3) 被害者がネットショップ上に陳列するために選択できる商品が少ない
業者は,当初,多くの商品(2万点以上と謳われることもある。)の中から被害者が任意に販売商品を選択できると説明するが,実際には,その半数にも満たない商品しか選択できず,また,敢えてその中から選択しても,短期間のうちに,在庫が無いなどの理由で取扱停止になってしまう。
(4) 業者が在庫を確保せず,在庫管理をしない
業者は,ドロップシッピングの特長として,在庫を持たずに商売ができる点を挙げ,そのことを勧誘材料のひとつにする。
しかし,仮に顧客から注文があったとしても,業者において在庫の確保をしていないため,顧客と被害者との間の売買契約がキャンセルされることがある。
また,業者の顧客に対する商品の発送が長期に渡り遅延することにより,契約がご破算になることもある。
(5) 業者が仕入れ価格を一方的に上げる
業者は,仕入れ価格が「業界最安値」であると謳い,被害者を勧誘する。
しかし,業者は,有名メーカーの売れ筋商品などにつき,ごく短期間で,被害者に対する卸価格を,一方的に,一般の量販店並みにつり上げてしまう。
そのため,被害者は,当初見込んでいた利益をほとんど確保できなくなってしまう。
第2 被害者保護のための法律構成
1 ※特定商取引法(特商法)のクーリングオフ解除(同法58条1項)
2 不実告知(事実の不告知)による取消(特商法58条の2第1項,消費者契約法4条1項1号)
3 断定的判断の提供による取消(消費者契約法4条1項2号)
4 詐欺取消ないし錯誤無効(民法95条,96条)
5 不法行為(民法709条等)などが考えられる。
※ ドロップシッピング商法が,特定商取引法上の業務提供誘因販売取引業にあたるか
(1) 業務提供誘因販売取引業とは
「業務提供誘因販売取引業」とは,@「商品の販売」A「商品の販売のあっせん」B「有償で行う役務の提供」C「有償で行う役務の提供のあっせん」のいずれかの事業であって,「業務提供誘因販売取引」をするものをいう(特商法51条1項)。
(2) 業務提供誘因販売取引とは
「業務提供誘因販売取引」とは,@「業務提供利益(内職商法やモニター料等)を収受し得ることをもって相手方を誘引し」,A「その者と特定負担(商品購入代金,役務の対価,取引料等の支払い)を伴う」B「商品の販売・あっせん,役務提供・あっせんに係る取引(取引条件の変更を含む)」をいう。
(3) ドロップシッピング商法が業務提供誘因販売取引業に当たるか
ア 業者は,被害者に対し,前述のように,初期費用を支払わせた上で,ネットショップを構築したり,商品を卸したりするものであるから,@商品の販売ないしB有償で行う役務の提供を業として行うものであるといえる。
イ では,ドロップシッピング商法が「業務提供誘因販売取引」であるといえるか。
(ア) 業者は,前述「ドロップシッピング」の取引形態におけるネットショップ運営業務の一部(商品選択,注文処理等)に従事することで,当該ネットショップでの収益を収受し得ることをもって(確約して)被害者を誘引しているので,@「業務提供利益を収受し得ることをもって相手方(被害者)を誘引し」たといえる。
なお,被害者は,前述のように,業者が提供するネットショップ構築などの役務や商品を利用して上記収益を収受するものとされる。
(イ) また,ドロップシッピング商法において,被害者は,業者が提供するネットショップ構築などの役務やシステムの対価として初期費用を支払うものであり,かつ,業者は,(その説明によれば,)被害者に対し,ネットショップ構築,集客(質問事案では,業者が「顧客をうちが紹介する」とまで言っている。)などの役務の提供を行ったり,商品を卸したりするものであるから,同商法が,A「その者(被害者)と特定負担(商品購入代金,役務の対価,取引料等の支払い)を伴う」B「役務提供・・に係る取引」であることも明らかである。
(ウ) よって,ドロップシッピング商法は,業務提供誘因販売取引業に当たる。
4) なお,被害者は,ネットショップ運営業務の一部(商品選択,注文処理等)を自らパソコン上で行うに過ぎないものと思われ,「その業務提供誘因販売業に関して提供され・・る業務を・・事業所等によらないで行う個人」(特商法52条,55条等)であるといえるから,特商法52条,55条等の適用にも問題はない。